2016年03月13日 ご質問にお答えして(13)
Q:イヤシロチ化を目指すため、施主側の心得、注意点について、実例を交えてもっと分かり易く。
※このお問い合わせは ご質問にお答えして(11)で『ケガレチ化した実例、原因』
でお話させていただいた、得意先のオーナー店長からご質問をいただきました。
A:まず、計画スタート時点での、お施主様の要望項目が
「お客様に満足していただくためには?」
「高い品質の商品(サービス)を安定して生産し続けるためには?」
「従業員が働く歓びを味わえ、笑顔で接客できるためには?」
「設備トラブルを極力少なく、施設が長持ち(次の更新まで20年以上)するためには?」
「何年たっても デザインが陳腐化せず、古臭くならないお店とは?」
等、きわめてシンプルかつ直接的な条件付けを提示されることです。
京都市の老舗洋菓子店様は、私が伺って最初の打ち合わせで、プレゼンボードを含めたPLANを数通りもテーブルの上に並べられて、「まだ何も話しを出来ていない、打ち合わせの初期に、こういうものを『タタキ台』と称して提案された時点で、これらの会社に依頼するのを中止し、断った。」
拝見すると、(銀行筋からのご紹介らしい)全国ブランドのデザイン事務所や、有名設計施工会社(大手百貨店の系列会社)のロゴが入った提案資料でした。「基本計画段階で議論を尽くしてから、このプロジェクトの全体スケジュール(工事日程、オープン日)を決定したい。」とおっしゃいました。(これは、当方のモチベーションにも火がつきます。平面計画はA案からスタートしてS案でやっと決まるまで丁度1年かかりました。)
オープンしたその日から京都の町並みになじみ、お店周辺でのランドマークとなっています。すでに15年ほど経過しましたが、まったく古びた様子も無く、おそらく、あと15年たっても変わらぬ笑顔で お客様にご愛顧いただいている光景が容易に想像できます。
次に、積極的な経営戦略を決められた後は、責任者に全て一任される事です。
2008年二月中旬。香川県観音寺市の洋装店様へ出張させていただきました。
社長様にご挨拶させていただくと、「観音寺市内でブティック、洋装店、呉服店を 計四店経営し、長らく『地域一番店』の座を守ってきたが、同じ商圏にイオ○グループの巨大ショッピングモールが出来る。中に出店するのもいいが、消極策に過ぎるため、この機会に既存店舗を統廃合し、バイパス道路沿いに取得していた土地に新しく 100坪のセレクトショップを新築,オープンしたい。」
「進出してきたショッピングモールで展開される洋服のブランドをこまめにチェックし、そこには無い商品、品揃えを 臨機応変にお客様に情報発信することで、より積極的な販売戦略を仕掛け、勝機を見出す。店長としてご長男(若社長)に企画段階から全て任せたい。」との事でした。
十月末のオープンまで、研究ご熱心な若社長と、充実した仕事をさせていただきました。
オープン後は たちまち大評判となり、相次ぐメディア取材やTVロケの舞台ともなり、『地域一番店』 の座を磐石のものとされています。
最後に、工事業者選定にあたって、入札金額だけではなく、各社の信頼性、担当者の技量までも考慮したうえで決定されることです。
東京都町田市の有名写真スタジオ様は、入札参加5社のうち、最高値で応札した業者さんの責任者と交渉され、最安値(比較で2割以上も安かった)の見積もり書を見せた上で、「これに合わせて下さい、とは言いませんが、私はこの金額を見た後でも、『真摯に積算した結果、最高値となった』御社に仕事を依頼し、○○君に現場工事を監督してもらいたい。」と、ある金額を提示しました。
さすがに即答出来るものでもなく、持ち帰り検討、となりましたが、1週間後には「御指名に感謝申し上げ、なんとか頑張らせて頂きます。」の返事がありました。
工事期間中は設計監理業務で何度か現場に伺いましたが、厳しい金額での受注にもかかわらず、なごやかな現場の『ものづくり』の空気。見事な現場運営。途中で東北大震災による1ヶ月の工事中断も乗り越えて、それは見事な出来栄え(意気に感じた担当者様と、それを盛り立てようとする下請けの各職方様方の、必死の努力の成果だと思われます)に仕上がり、
引渡し検査で細部までチェックさせていただきましたが、一切妥協の無い仕事ぶりに、感動を覚えました。また、完成後の『追加工事項目』も、とても良心的な内容でした。
オープン後は ただちに全国的な注目を浴び、大繁盛のご様子です。設計者として、『お店の繁盛』にまさる歓びはありません。